ガイド / コスト
依頼を本当の見積に変える5つの情報
2026年9月23日
機械加工の見積には2種類あります。1つは、必要な情報がすべて見えていたので加工会社が責任を持てる金額。もう1つは、加工会社がどれだけ推測しなければならなかったかに応じて、余裕分を含ませた金額です。
違いを生むのは、すべてお客様が送る資料です。見積を本当の見積にするための要素を説明します。
1. 加工会社が開ける形状データ
役に立つ順に並べます。
| 送るもの | 加工会社が得られる情報 | 見積に十分か |
|---|---|---|
| STEPまたはIGES | 正確な面と寸法 | はい |
| 寸法入りのPDF図面 | 設計意図、公差、指示事項 | はい(モデルと併用) |
| DXFまたはDWG | 平面の輪郭、板状の部品向き | 2D部品なら可 |
| STLまたは3MF | 形状のメッシュ近似 | いいえ、参考のみ |
| 定規を写し込んだ写真 | サイズと形状のおおよその把握 | 測定値があれば可 |
| CADのネイティブファイル | 加工会社が別のソフトを使っていれば何も得られないことが多い | 単独では不可 |
CADから出力するならSTEPを選んでください。ほぼすべてのソフトが出力でき、ほぼすべての加工会社が開けます。モデルと図面の両方があれば、両方送ってください。モデルは形状を伝え、図面は形状では伝えられないすべてを伝えます。
2. 材料と質別を明記する
「アルミ」は材料の指定になりません。「6061-T651板材」なら指定になります。
合金、質別、そして必要に応じて素材の形状を記載してください。鋼の場合は状態と、機械加工の前に焼入れするのか後に焼入れするのかも加えてください。それによって、後から研削で仕上げる形状が決まるからです。
本当にわからない場合は、部品の役割を説明し、加工会社に提案してもらってください。誰も書き留めていない推測より、そのほうがよい結果になります。
3. 実際に必要な数量
段取り費用が数量に分散されるため、数量は部品そのものを除けば何よりも価格を左右します。
可能なら3つの数字を伝えてください。今必要な数量、1年間で見込む数量、リピートがあるかどうかです。25個が100個になるとわかっている加工会社は、治具の作り方を変え、最初のロットを安く見積もります。
4. 重要な公差だけを指定する
ここで最も多くの費用が無駄になります。習慣ですべての寸法を厳しくした図面は精密部品の価格になり、その余分な精度は何の役にも立ちません。
正確でなければならない形状に印を付けてください。ベアリングやブッシュが入る穴、締結やシールをする面、ほかの部品と位置を合わせなければならない箇所です。それ以外には普通公差の欄を設け(機械加工の自動車部品なら一般にプラスマイナス0.1〜0.25 mm)、図面にその旨を明記してください。
表面粗さも同じです。必要な箇所にだけRaを指示し、それ以外は削り放しのままにしてください。
5. 背景を一、二文で伝える
部品が何であり、何に取り付けられ、壊れたら何が起きるのかを加工会社に伝えてください。一文で済み、それによって部品の見積方法も作り方も変わります。
配線を固定するブラケットと、サスペンションアームを位置決めするブラケットは、図面上では同じに見えることがあります。一方は単純な仕事です。もう一方には、材料証明、フィレットRへの配慮、場合によっては検査成績書が必要です。
発注者が忘れがちな5つの項目
- 表面処理。 アルマイト、めっき、粉体塗装、ビードブラスト。図面に書かれていなければ、部品は削り放しで届きます。
- エッジの状態。 「鋭いエッジはすべて糸面取り」の一行で、指のけがと応力集中を防げます。
- ねじ。 サイズ、ピッチ、深さ、通しか止まりか。
- 刻印。 部品番号、改訂番号、向きを示す矢印。プログラムに入れれば安く、後からだと高くつきます。
- 必要な時期。 「できるだけ早く」ではなく日付で。加工会社は実際の日付をもとに日程を組みます。
コピーして使える見積依頼テンプレート
メール本文や見積依頼フォームの備考欄に貼り付け、わかっている項目を記入し、自信がない箇所はそう明記してください。
部品:フロントエンジンマウントブラケット、片側
数量:今回2個、来年は20個の見込み
材料:6061-T651、提案があれば歓迎
ファイル:STEP添付、PDF図面添付
重要:12.00 H7の穴2か所、中心間84.00 mm
重要:取付面の平面度0.05 mm以内
普通公差:指示なき寸法はプラスマイナス0.15 mm
表面処理:白アルマイト
ねじ:M8 x 1.25 を2か所、深さ16
用途:ブロックに締結、マウントブッシュを支持
希望納期:11月14日
備考:純正品は鋳造で割れている、写真添付
このブロックの項目はどれも、書いていなければ加工会社が問い合わせるか、身を守るために高めに見積もるものです。10分かけて書けば、たいていはそれ以上の費用が節約できます。
送らないほうがよいもの
- 1つの部品しか作らないのに、アッセンブリー全体のモデル
- 大きさの目安になるものが何も写っていない20枚の写真
- 他社サイトの部品のスクリーンショットに「これと同じで、もっと強く」とだけ書いたもの
- すべての寸法を重要寸法として枠で囲んだ図面
- 図面なしで「昨日まで」という納期
どれも致命的ではありません。ただ、話が見積から推測へと移ってしまい、推測には費用がかかります。
お手元の資料をお送りください。どの加工会社に送る前にも、不足している情報をお伝えします。アイデアから部品までの全体の流れは発注ガイドから、費用の内訳は見積価格を決める要素をご覧ください。
よくある質問
STLファイルで見積してもらえますか?
形状を見るには十分ですが、加工に使うには不十分です。STLは三角形のメッシュなので、曲面はすべて近似であり、正確な寸法は含まれていません。CADから出力できるならSTEPを送り、STLは見た目の参考として添えてください。
予算を加工会社に伝えるべきですか?
図面がある場合は、目標価格を伝えると役に立ちます。その価格に届かない加工会社が、どの要件が費用を押し上げているかを教えてくれるからです。図面の代わりに予算だけを伝えても役に立ちません。見積の対象がないからです。
同じ部品を何社に送るべきですか?
価格が妥当かどうかを見るには2〜3社で十分です。それ以上になると、価格差に見合わないほど見積の管理に時間がかかります。また、部品が十数社に一斉送信されていると気づいた加工会社は、見積を辞退することがよくあります。